プロローグ

このコーナーを読むにあたっては、おそらくこれからイシダイ釣りをやってみようか、あるいはすでにやっているけど、イマイチよくわからない・・・という方がほとんどではないでしょうか。イシダイは昔から“荒磯の王者”と呼ばれ、なんとなく難しい釣り、あるいは男の釣りというイメージが抱かれています。

しかし、釣れる時期に釣れる場所に行くことができれば、そんなに難しいものではなく、十分狙って釣れる魚です。また、イシダイ釣りの仕掛けは非常にシンプルで、どちらかといえばルアーに近い感じです。アタリもウキを使わないため竿先や手元までダイレクトに伝わり、よほどのことがない限り見逃すことはありません。

とは言っても、イシダイ釣りはやり始めるととても奥が深く、迷路に入り込むこともしばしばあります。そこでこのコーナーでは、イシダイ釣りをできるだけ詳しく解説し、誰でも楽しめる方法を書いていこうと思います。写真だけなく、動画での解説も入れる予定なので、気長(?)にお待ちください。

では、さっそく始めましょう。おっとその前に「おまえは何者?」と思われる方もいるかもしれないので、まずは簡単に自己紹介しますね。私(大野哲也)は1960年福岡県生まれ。磯釣りを始めたのは弱冠18歳の頃でイシダイ釣りは20歳からやり始め、かれこれ40年近くになります。
21歳のときに「釣りを仕事にしたい!」と釣り出版社に飛び込み、様々な釣りを体験しました。なかでも離島のイシダイとオナガグレにはどっぷりとハマり、宇治、草垣、黒島、硫黄島、そしてトカラ列島と南西諸島にはよく通いました。単身で9週連続福岡から鹿児島の枕崎まで走ったこともあります(笑)

30歳代の後半になると今度は男女群島にせっせと通い、ほとんどのポイントで竿を出しました。40代の時に「一生に一度の贅沢」と、ゴールデンウィークが終わった翌日に友人と2人で渡船をチャーターし、サメ瀬でイシダイを釣りまくったことも。今となっては懐かしい思い出です。そして50代になるとMr.Ishidaiを立ち上げ、毎日いろんな釣具をいじくっては次世代のイシダイ釣りを考えています。おっと長くなりましたのでそろそろ本題に戻りましょう。

イシダイ釣りのおもしろさは何といっても竿を海中に引っ張り込むような独特なアタリと、ハリに掛かってからの凄まじいパワー。これらを実際に体験すると声も出ないほどびっくりさせられます。とくに60㎝を超える大型ともなると「もう止めてくれ!」と叫びたくなるくらい強烈なファイトで楽しませてくれ、イシダイ釣りが男の釣りといわれる所以がここにあります。

イシダイ釣りに入門してしばらくは「とにかくイシダイの顔を見たい」に尽きると思います。でも、ある程度の枚数を仕留め、次第にイシダイ釣りが分かってくると今度は「デカバン狙い」と「型よりも数」という二つに道に分かれます。
前者はとにかく一日のうちに一度もアタリがなくても辛抱でき、ボウズ続きでもいつかデカバンが釣れることを信じる大物キラー、そして後者はイシダイの親戚であるイシガキダイでもいいから、とにかく竿を曲げたい、たくさんアタリを楽しみたいという釣果優先型。

登山に例えるなら、大物志向はさながらマッキンリーやエベレストを目指す登山家であり、一方の数釣り派は低山でも自然の中で散策できればいいというトレッキング派と思っていただければいいかと。ちなみに私は20~30代は大物に絞って釣行を重ねていましたが、だんだんとその気持ちはなくなり、今はもっぱらアタリの回数に楽しみを見出しています。

イシダイってどんな魚

イシダイはスズキ目イシダイ科に属する魚で体長30㎝くらいまでを「サンバソウ」と呼び、釣りの対象となるのはだいたい40㎝くらいからです。メインは最低でも50㎝以上、できれば60㎝、70㎝の大型を釣りたいというのが多くのイシダイ釣り師の願望です。

では、どのくらいの期間で60㎝に達するか、ハッキリしたことは不明ですが、15年、20年かかるという人もいれば、もっと早く成長するという意見もあります。いずれにしても、大型ほど賢く、パワーもあるので、そうやすやすとは釣れないのがイシダイの良いところでもあるのです。

幼魚期のイシダイはすべて縞模様がありますが、成長するとオスの模様は消えて体色が銀色になってきます。イシダイ釣り師が「銀ワサ」や「銀ピシャ」といっているのはオスのイシダイを指し、大きくても縞模様が残っているのはすべてメスになります。


↑オスのイシダイ。銀色に変わっている。


↑七縞模様がハッキリとしたメスのイシダイ。

イシダイの仲間にはイシガキダイがいて、こちらはイシダイの縞模様に対して斑点模様が特徴です。以前は、あまり見られなかったイシガキダイですが、水温が高くなってきたせいか、今やイシダイ釣り場ではどこに行ってもイシガキダイの数が増え、ウニエサを使うと真っ先に食ってきて、なかなか本命のイシダイに巡り合えないという現象も増えてきました。

イシガキダイのオスは大きくなって老成魚になると口の周囲がだんだん白くなり、イシダイ釣り師はこれを「クチジロ」と呼びます。小型のイシガキダイは歓迎されませんが、このクチジロは別格でイシダイよりもパワーがあり、80㎝を超えるモンスター級が釣れればまさに一生モノの大トロフィーといえます。


↑クチジロはイシガキダイ(♂)の老成魚といわれる。しかし、30~40㎝クラスでも同じ柄と口の形をした個体もいる。本当のところは不明・・・?

イシダイ科の魚の特長は、どの個体も歯が硬くて口よりも出ているということ。鳥のクチバシ、人間でいうところの“出っ歯”ですね。このためハリが刺さる部分は口先ではなく、口の横、正確には歯の外側の皮膚になります。稀に歯と歯の間にハリが刺さることもありますが、歯自体には掛かりません。イシダイは顎の筋肉が発達していて、仮にハリをイシダイがくわえると、いとも簡単にペンチで潰したようになります。エサを付け替えようとして仕掛けを回収したら、ハリ先が潰れていた・・・そのときはイシダイが噛んだと思って差し支えないでしょう。

口の横の皮膚にハリを掛けるには、イシダイがエサをくわえて反転し、走り出すまで“待つ”ことがとても重要となってきます。詳しくは釣り方編で説明しますが、アタリがあったからといって、すぐに竿をあおって掛けようとしては絶対にダメ。一度逃げたイシダイは二度と同じエサには近寄らないといわれています。

それともうひとつ、イシダイの特長に「鳴く」というのがあります。音を出すといえばイルカやクジラなどの哺乳類がありますが、魚類でもイシダイは釣り上げるとグッグッグッと鳴きます。浮袋から音が出ているようですが、これは仲間に警告を与えている?という意見もありますがその真相は解明されていないようです。

 

道具編①竿の選び方・前編

それでは、イシダイ釣りを楽しむにあたって、どんな道具がいるのか紹介することにしましょう。

まずは竿。釣具店に行くと、イシダイ竿はたいてい隅の方に並べられ、同じ磯釣りで使う上物竿と比べると、太くて重くて、頑丈で、しかも高価というイメージが先行します。しかも漢字ででっかく竿の名前がパッケージに書かれているのを見ると、もう威圧感バリバリで・・・それだけで引いてしまう人もいるかもしれません?(笑)

しかもキャッチコピーで「手持ち」「置き竿」「遠投」「ガンガゼ用」「南方宙釣り」etc…なんて書かれているのを見ると、初めての人には何がなんだかさっぱり。さらに「M」だの「MH」だの「H」といった上物竿にはない謎の表記に、いよいよもって「イシダイ釣りはややこしい」と、手を引っ込めるかもしれません。
そして意を決して店員さんに尋ねると、返ってきた答えは「さあ???私はイシダイやらないので・・・」。笑い話のようですが、実際によくあることです。

でも、これでいいんです。イシダイ釣りは自分で体験しながら、自分で少しづつ答えを見つけ出すのが正解で、いわば“自分流”を探す釣りでもあるのです。こうしなくちゃダメだ、こうするべきだ!と判断するのはすべて自分自身。ここにイシダイ釣り本来の楽しさがあります。

イシダイ竿の選び方の前に、竿の各部の名称を記しておきますね。覚えておくと何かと便利です。とくにルアーからイシダイ釣りに入門する場合、呼び名が変わりますので目を通しておいてください。

下の写真はガイド部分のアップです。ロッドのカスタマイズなどをお願いすると「スレッドは?」とよく聞かれますが、答えはガイドを止める糸のことです。真ん中の色が違う部分は「ピンライン」と呼ばれています。

イシダイ竿の手元には石突があります。これにも各部に名称があります。もし石突を交換する場合、絶対に確認しなければならないのが「込み」の太さ。自分に竿に合うものを選ばないと装着できないので注意が必要です。石突には木製のほか、プラスチックやアルミ製などがあります。木製では欅(けやき)、黒檀(こくたん)、ウォールナットなどの種類があります。

 

次はいよいよ本題です。下の図はイシダイ竿の選定方法を簡単に表したものです。基準としては最初に振出か継竿かを決め、次にタイプ(調子)、そして長さを求めます。さらにグレードや価格を検討し、最終的な絞り込みを行います。

最初の振出か継竿かという点は、振出は軽量で機動性に優れているというメリットがあります。価格も比較的安価でワンシーズンだけちょっとやってみよう、というライト派にはおすすめです。
一方、本格的にイシダイ釣りを始めようと固く決心した人には継竿がいいでしょう。振出に比べて感度がよく、パワーも十二分にあります。振出よりもガイドの数が少なめなのでバランス的にも整っています。
余談ですが、振出は根掛かりしたときに、手前に竿を引っ張って切ろうとすると、急に竿が縮まって指を挟むことがあります。むちゃくちゃ痛いですよお(経験者は語る)。

継竿のタイプ(種類)は、先に書いたようにM、MH、Hと表記されているケースが多く、このアルファベットは竿の硬さ(調子)を示したものです(下図参照)。

それぞれのタイプを日本語で表現すると、Hのハードは「先調子(硬調子)」、ミディアムハードは「7:3調子(中硬調子)」、Mのミディアムは「6:4調子(軟調子)」、Lのライトは「本調子」もしくは「胴調子(極軟調子)」になります。
※Lの表記はイシダイ竿では見かけません。
※硬調子や軟調子という表現は、竿の硬軟を表記したもので、最近はあまり使われていません。

はじめての人が使いやすいのはMHのミディアムハードで、仕掛けの投入、アワセ、やり取りがそつなくこなせます。また、手持ちでも置き竿でも使うことができる万能タイプになっています。

継竿は文字通り「継ぐ竿」。継ぐ方法にはいくつかあって、オーソドックスながら強度がある「並継」、全体にスリムに仕上がって見た目がいい「印籠継」、竿の一部分だけに使われる「逆インロー継」などがあります。

印籠継は上下に継いだとき、きっちりと収まらず中央に1~2㎝ほどの隙間が生じます。はじめて印籠継を手にした人は無理やり押し込んで固着させてしまうケースが多いので注意しましょう。
↓は印籠継です。竿と竿の間に隙間がありますがこれで正解!
無理に差し込まないでください。

継についてもうひとつ。イシダイの継竿には3本継、4本継があります。中には3本半といった、ややこしい表現のものもありますが、ほとんどは3本か4本です。バランス的にできるだけ1本モノに近いものが優れていることから、一時は3本継の人気が高かったようですが、仕舞寸法が長いため宅急便の送料が値上がりしたことと、クルマに積みにくいこと、渡船から良い顔されない、などの理由により、再び4本継が主流となりつつあります。

釣り場で継竿を組む際は、差し込みの部分が濡れたまま継ぐと、使っている途中で乾燥し、そのまま固着してしまうことがあります。そうなると一人では抜けなくなるため注意が必要です。雨天時は湿度が高いため濡れても固着はあまり気にしなくていいようです。

ところで、竿を選ぶ基準のひとつに継の良し悪しがあります。継の差し込み部分は手作業で少しづつ合わせながら削るのがセオリーで、機械でガーッとやったくらいでは微妙な差し込みはできません。つまり、ここに竿作りの職人技があり、本当に良い竿は音もなくスッと入り、抜くときもほんの少し回すだけで外すことができます。

もし継ぐときにギギギッと音がしたり、固くてなかなか入らない竿に出合ったら、ひとまず置いといて別の竿を探してみましょう。間違っても「自分で削って入れよう」とか思ってはダメです。サンドペーパーなどで削りすぎるとユルユルになって差し込み部がガタつくことになりかねません。こうなった場合、リメイクで直せることもありますが、再びガタつきだすこともあります(これも経験者は語る・・・(笑))。